股関節痛・先天性股関節脱臼でお悩みの方

股関節は、胴体と足をつなぐ関節であり、体重の数倍の荷重に耐えて、自由な動作や歩行を可能にしています。この股関節は臼状の関節で、寛骨臼と呼ばれる半球状の凹み中に球状の大腿骨頭がはまりこんだ形をしています。しかし、寛骨臼は大腿骨頭を容れるには深さが不足なので、そのまわりを線維軟骨よりなる関節唇というものでおぎなわれています。この寛骨臼と大腿骨頭が何らかの原因で不適合を生じると、無理な力が骨頭の一ヶ所に集中することとなり、股関節の痛みと運動制限を生ずる変形性股関節症をおこします。
不適合性を生じる原因には、正常な形の股関節に更年期以後に特別な原因なしに発症するものと、先天性股関節脱臼やペルテス病、大腿骨頭壊死、大腿骨頚部骨折、化膿性股関節炎などを経過した股関節が、治りきらないところに無理な力が加わったり、また適切な治療を行わないと、20~25歳の比較的若い年齢層でも発病して、中年以後に股関節の破壊が進行するものとがあります。前者は一次性変形性股関節症、後者は二次性変形性股関節症と呼ばれます。日本では先天性股関節脱臼後の二次性変形性股関節症が多くみられます。

股関節症の療法

初期のうちは、安静や筋力強化、体重の減量、杖をつくように心掛ける、長が歩きを避ける、鎮痛消炎剤の服用、副腎皮質ホルモンの関節注入などによって痛みは和らぎますが、実際には安静を一生、守り通すわけにもゆかず、再発が多くみられます。
従って、臼と骨頭の適合性の悪さが認められたら、早期に適合させる手術(臼蓋形成術、骨切り術)を行うことが勧められます。しかし、適合させる手術も出来ない程に、変形が進行してしまった場合には、姑息的な手術法ではありますが、関節に加わる力を軽減する筋解離術が行われます。
そして、他にすぐれた治療法が考えられない重症例には、人工股関節置換術が行われます。

人工股関節全置換術について

変形性股関節症、リウマチ性股関節症、大腿骨頭壊死、外傷などにより、股関節の機能である支持性と運動性が損なわれて、激しい痛みが続き、すでに保存療法や骨切り術などでは回復が見込まれない場合に人工関節を用いた関節の再建が行われます。
しかし、人工股関節は生体にとっては大変大きな異物でありますし、機械であるがためた摩耗(すりへる)や骨と人工関節の間の固定がゆるむこと、また脱臼や感染などの、まだ耐久年数に問題が残されています。
当院では、日本で最初に開発され、1970年から臨床応用されている前澤式軸旋型人工股関節(金属臼蓋 対 ポリエチレン骨頭)を使用しています。この軸旋型人工股関節は、股関節により近い構造と機能に設計されており、大型のポリエチレン骨頭が脱臼をし難くし、またこのポリエチレン骨頭が人工骨頭の頚部軸で軸旋して、磨耗を僅少にして摩耗粉による合併症が起こらないように工夫がされています。
現在、この軸旋型人工股関節を行った方の85%に満足な結果を得ておりますが、最近は手術器具の改良や術者の腕の進歩も加わり成績はさらに改善されてきています。