脊椎分離症・脊椎すべり症

脊椎は前方の椎体と後方の突起部の2つからなっていますが、この両者の間の骨性の連絡が離れて、腰椎の構築上の不安定を生じて腰痛をおこす病気です。この分離はほとんどが下部腰椎に発生します。そして腰部椎間板ヘルニアとともに若者の腰痛の大きな原因の1つです。

原因

この分離の原因には、先天性のものと外傷性のものがありますが、最近では、 小外傷が反復して加わった結果生じる疲労骨折が多くなっています。中・高校生ごろの運動選手が同一動作をくり返すことでおこることが少なくありません。

分離が生じると、これに椎間板の変性が加わって、椎体が前方へすべり出すことがあります。これが「すべり症」で、20~30歳ごろの男性に多くみられます。分離をとも なわないで、すべり症が発生することもあります。これを偽性すべり症といい、40歳 以上の女性に多く発生します。

症状・診断

椎間板ヘルニアのような突発的な腰痛を経験することなく、慢性的な腰痛があり、これがスポーツ、中腰での作業、長時間の同一姿勢などを動機として増強し、この状態がくり返されるのが特徴です。分離症に特有の症状は特定されませんが、 腰痛、殿部痛、大腿部痛、分離椎体の圧痛などがあります。診断はエックス線写真で容易にできます。

治療

日常生活に困難なほどの腰痛がつづく間は、分離部の安静の目的でコルセッ トを装着します。必要に応じて鎮痛消炎薬、筋弛緩薬の服用もよいでしょう。

一般に分離症では、腰椎前弯の症状が強いことが多いので、正しい姿勢の指導や腰背筋、腹筋、股関節周囲筋を増強し、耐久力をつける訓練をつづけ、筋肉でコルセットの役目をはたせるようにします。しかし、仕事に支障があるほどの腰痛をくり返す人は、手術をして、固定するのがよいでしょう。

予防

分離があっても無症状であったり、プロ野球の選手や力士のようにはげしい運動をつづけられる人もいるのです。これは腰部と、股関節周囲筋のバランスがとれているためでしょう。体操療法によって正しい姿勢を保ち、筋力を増強することは、分離症の予防にとって大切なことです。